八大龍王の話

 当山の裏山は矢坂山といわれ、「万成石」という花崗岩が採れることで有名です。
 その矢坂山の山頂に富山城の城跡がありますが、その北東の裾の位置に「龍王」という地名があります。そして、そこを流れる「龍王川」という川の横に「八大龍王」が祀られています。
 「八大龍王」というのは、法華経守護の善神として日蓮聖人の顕わした大曼荼羅にも勧請されていますが、@難陀(ナンダ)龍王、A跋難陀(バツナンダ)龍王、B娑伽羅(シャカラ)龍王、C和修吉(ワシュキチ)龍王、D徳叉迦(トクシャカ)龍王、E阿那婆達多(アナバダッタ)龍王、F摩那斯(マナシ)龍王、G優鉢羅(ウハラ)龍王といわれる八つの龍族の王のことです。古来龍王はインドにおいて龍形の鬼神として、火をおこし、水雨をつかさどるものと崇拝されました。故に日本でも適量の水雨をもたらすことによって、五穀豊穣を約束する農耕神として、また、火難、水難守護の善神として信仰されたのです。
 特にこの地に祀られている八大竜王は、その昔、矢坂山頂に築かれていた富山城の東北に位置するところであり、法華経の大信者であった城主松田一族が、富山城の艮(うしとら)鬼門封じとして、水難、火難除け、領国の五穀豊穣を祈って勧請されたと考えられます。
 因みに総本山身延山の艮鬼門の方角には七面山が位置し、その山頂には七面大明神が鬼門封じとして祀られていますが、実はこの七面大明神というのも龍王の娘(龍女)にあたるそうです。
 このように法華経、法華経行者の守護神である八大龍王は古くから各地に祀られており信仰の対象として崇拝されています。当地の龍王様も、毎年七月には龍王様の前にある龍王堂(昭和五十四年再建)に信者達が集まり、お祭りが行われています。